産業用安全通信プロトコルであるCIP-SafetyとFSoEの違いを解説します。
この記事で分かること
- CIP SafetyとFSoEの概要が分かる
- CIP SafetyとFSoEの違いと特徴が分かる
CIP SafetyとFSoEの存在は知っているけど違いが良く分からない。。
どちらもラインと装置の安全制御に使用されるオープンなネットワークなんだ!
簡単に違いを教えてちょうだい!
概要
CIP SafetyとFSoEはラインと装置の安全制御に使用されるオープンネットワークのプロトコルです。自動車などの大規模ラインにはCIP Safety、装置レベルではFSoEが安全制御を実現するために使用されます。
特徴とデメリット
CIP Safety(Common Industrial Protocol Safety)
CIPとはCommon Industrial Protocolの略で、異なるネットワークで共通のプロトコルを使用できるように設計されています。物理メディアやデータリンク層に依存しないように設計されているため、将来のネットワークの拡張にも対応可能できます。CIPは物理的なメディアに依存せず標準データのルーティングが可能です。
CIP Safetyは標準CIPプロトコルを拡張して、アプリケーションおよびトランスポート層、ユーザ層にソフトウェア上で実装され、安全ネットワークとして認証されています。標準のCIPサービスやデータリンク層には依存していないため、標準のCIPサービスを利用しての安全メッセージのルーティングが可能です。
特徴
CIP Safetyの特徴は以下の通りです。
- 拡張性が高い:CIP Safetyは他のCIPプロトコルと互換性を持っており、既存のEtherNet/IPと同じネットワーク上で通信することができます。
上記特徴に加えて伝送距離も汎用のEthernetと同様に100mでありますが、スイッチングハブを使う方法や、その他さまざまな伝送距離拡張のための対応方法が容易されており、実質的に伝送距離には制限がありません。これらのことからCIP Safety(EtherNet/IP)は大きなシステムにも対応可能なため、自動車の大規模ラインの装置間の安全通信に選ばれます。
そういえば、EtherNet/IP対応しているPLCやロボットはCIP-Safetyも対応していると思って良いのかな?
EtherNet/IP=CIP Safetyと勘違いしている人も多いけど、EtherNet/IPに対応しているからCIP Safetyも対応しているとは限らないよ!
あと、PLCでEthernetポートを複数用意している場合、いずれか1ポートがCIP Safety対応というパターンもあるからメーカに確認が必要だね!
デメリット
CIP Safetyのデメリットは以下のとおりです。
- 通信遅延:CIP Safety通信はEtherNet/IP通信などの他のイーサネットベースの通信と共存するため、ネットワーク負荷が増加すると、CIP Safetyの通信に遅延が生じる可能性があります。そのため、適切なネットワーク設計と機器やデータによって通信の優先度を設定する必要があります。
FSoE(Fail Safe over EtherCAT)
FSoEは、EtherCATネットワーク上で動作する安全通信プロトコルです。FSoEは、PLCとサーボドライバやセンサなどのセーフティ関連のデバイスとの間で高速な通信を実現します。
特徴
FSoEの特徴は以下のとおりです。
- 高速通信:FSoEはシンプルで無駄がないフレーム構造でネットワーク帯域を高効率に使用しています。また、リクエスト/レスポンス方式の通信ではなく、スレーブがフレーム内のデータを直接読み書きしているため、高速な通信を実現できています。
- ネットワークの冗長化が可能:数珠つなぎの接続で接続線が1つでも断線が発生すると、データの流れはそこで止まってしまいます。しかし、リング型の接続にすることで断線が発生しても、もう一方の通信経路で通信を継続することができます。
- 通信設定がシンプル:FSoEの通信設定は3ステップです。ESI(EtherCAT Slave Infomation)ファイルの読み込み→構成設定→パラメータ設定とFSoEの通信設定は比較的簡単にできます。
デメリット
- 拡張性が低い:EtherNet/IPは他の通信プロトコルとの共存ができるのに対して、EtherCATベースのFSoE通信は、特定のデバイスのポートで動作します。そのため、他プロトコルとの共存が一般的にできないです。
まとめ
自動車の組み立てラインなどの通信するデータの量が多い大規模な装置間通信を行う場合は、拡張性が高く、装置間安全制御に最適なCIP Safetyがオススメです。一方で、小規模、中規模のラインや装置のマイコンとPLC、またはPLCとサーボドライバ・センサ間の通信を行う場合は、高速かつ冗長化に対応したFSoE通信がオススメです。
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