EtherCAT、EtherNet/IP、PROFINETの違い

産業用オープンネットワークって色々あってどう選べば良いかわからない。。

そうだね。産業用オープンネットワークの中でも、高いシェアを誇っているのが「PROFINET」、「EtherNet/IP」、「EtherCAT」の3種類なんだ!

そうなんだ!それぞれどんな違いがあるんだろう?

それぞれの特長とアーキテクチャを説明するね!どれを採用すれば良いか分かるようになるよ!

この記事で分かること

  • 産業用オープンネットワークの選び方が分かる
  • PROFINET、EtherNet/IP、EtherCATの特長、通信仕様、主な用途が分かる
  • PROFINET、EtherNet/IP、EtherCATの特長が一覧で分かる
目次

産業用オープンネットワークとは

産業用オープンネットワークは様々な企業、団体によって運営されているネットワークです。公開されている規格(プロトコル)に準拠したデバイスを使って構築したネットワークで、処理手順や機能、外部インターフェース、構造などの仕様も公開されています。
従来は、各メーカーが独自のネットワーク規格を持っていたため、異なる機器やシステム同士を接続することが困難でしたが、産業用オープンネットワークの登場により、異なるメーカーの機器やシステム同士を簡単に接続することが可能になりました。
主な産業用オープンネットワークとしては、EtherNet/IP、EtherCAT、PROFINETがあります。これらはそれぞれ独自の通信方式やプロトコルを持ち、様々な用途に使われます。それぞれ異なる特徴や用途を持っており、現場のニーズに合わせて選択されます。

産業用オープンネットワークの選び方

産業用オープンネットワークを選ぶ際には、以下のような点を抑える必要があります。

  1. 用途に合わせた選定
    産業用オープンネットワークは、用途によって異なる特性を持ちます。例えば、高速通信が必要な場合にはEtherCATが適している一方、広い範囲での通信が必要な場合にはPROFINETが適しています。そのため、自社の用途に合わせて、どの産業用オープンネットワークを選定するかを検討する必要があります。
  2. 対象業界の標準
    業界での標準化が進んでいるネットワーク規格の採用状況の確認。
  3. 信頼性と拡張性
    産業用オープンネットワークを選ぶ際には、信頼性や拡張性にも注目する必要があります。たとえば、Ethernetベースの産業用オープンネットワークは、既存のLANとの接続が容易で、拡張性が高いといえます。また、信頼性については、故障が発生してもその影響が最小限にとどまるような冗長化機能があるかどうかを確認する必要があります。
  4. マルチプロトコル対応
    マルチプロトコル対応は、複数の通信プロトコルに対応しており、異なる機器やシステムを接続しても通信できるようになっています。これにより、異なるメーカーの機器やシステムを自由に選択して組み合わせることができ、システム全体の柔軟性や拡張性が向上します。また、将来的に通信プロトコルが変更された場合でも、対応できるため、システムのライフサイクルを延ばすことができます。
  5. コスト
    産業用オープンネットワークの導入には、様々なコストがかかります。たとえば、機器の費用やシステムの設計・構築にかかる費用などがあります。そのため、導入にかかる総コストを把握し、自社の予算に合わせて選定する必要があります。
  6. メーカーのサポート体制
    産業用オープンネットワークを導入する際には、メーカーのサポート体制も重要なポイントです。導入後に問題が発生した場合に、メーカーから迅速な対応を受けることができるかどうかを確認する必要があります。また、導入前にはメーカーから十分な情報提供を受けることも重要です。

EtherNet/IP

特長

EtherNet/IPは、Ethernetを使用した産業用のオープンネットワークの1つです。
ODVA(Open DeviceNet Vendor Association)が管理しており、様々な産業用機器に採用されています。コントローラ間のネットワークとしてだけでなく、フィールドネットワークとしても使用可能です。また、標準のEthernet技術が使用されているため、様々な汎用Ethernet機器と混在させて使用することができます。

  1. 大容量のデータを扱いやすい
    EtherNet/IPは、TCP/IPプロトコルを採用しているため、大容量データの送受信が可能です。
    TCP/IPプロトコルは、信頼性の高いデータ伝送を実現するためのプロトコルで、パケットロスが発生しても自動的に再送信することができます。また、パケットの順序を制御することで、正確なデータ伝送を実現します。
    このため、EtherNet/IPは、大容量データの送受信に適したプロトコルとなっています。例えば、製造業界で使用されるPLCなどの制御機器においては、様々なセンサーからのデータや画像データなどの大容量データを処理することがありますが、EtherNet/IPを使用することで高速・正確なデータ伝送を実現し、効率的な制御が可能となっています。
  2. 一般的なネットワーク機器と親和性が高い
    EtherNet/IPはEthernetをベースとしたプロトコルであり、一般的なネットワーク機器と互換性があります。Ethernetは、LANで広く使用されている規格であり、多くのネットワーク機器で使用されています。そのため、EtherNet/IPを導入する際に、既存のネットワーク機器との接続が容易になります。
    また、EtherNet/IPは、TCP/IPプロトコルを採用しており、これはインターネットを構成するために使用されているプロトコルであり、多くのネットワーク機器が対応しています。これにより、EtherNet/IPは、一般的なネットワーク機器との接続が容易になります。
  3. CIP(Common Industrial Protocol)による機器間でシームレスなデータ伝送
    CIPは、EtherNet/IPのプロトコルの一部であり、異なるベンダーが製造した機器同士でも、データ伝送を標準化されたフォーマットで行うことができ、自動的にデータ伝送方式を選択して変換することができるため、シームレスなデータ伝送が実現できます。これにより、製造ラインや工場内の機器の相互接続に適しており、生産性の向上につながります。

通信仕様

EtherNet/IPの通信仕様を以下表に示します。

項目EtherNet/IP
伝送種類10BASE-T/100BASE-TX
伝送速度10/100Mbps
通信距離ノード間距離:100m以内
伝送ケーブルSTPケーブル カテゴリ5/5e
トポロジスター、ライン、ツリー
最大接続台数制限なし

アーキテクチャ

EtherNet/IPは、標準Ethernetハードウェアで動作し、TCP/IP及びUDPの通信プロトコルを用いています。また、CIP(Common Industrial Protocol)と呼ばれるネットワークのアプリケーション層を構成するアプリケーションプロトコルを使用しています。

通信方法

通信方法としては、一定周期で通信するImplicitメッセージ通信と、任意のタイミングで通信するExplicitメッセージ通信の2種類があります。

Explicitメッセージ通信

Explicitメッセージ通信は、任意のタイミングでデータを送受信します。任意のタイミングで通信を行うため、定期性の必要がない情報を取得する用途に適しています。例えば、設定値の読み書きといったような装置立ち上げ時のみ通信すればいいといった場合です。
Explicitメッセージ通信は必要なタイミングのみデータを送受信するためネットワークへの負荷が少ないです。

Implicitメッセージ通信

Implicitメッセージ通信は、設定されたRPI(通信周期)ごとに、サイクリック(一定周期)にデータを送受信します。サイクリックに通信を行うため、リアルタイムな情報が欲しい用途に適しています。例えば、各センサーの状態を常時モニタリングしたいといった場合です。Implicitメッセージ通信の代表例として、プログラムレスでサイクリックなデータ送受信が行えるタグデータリンクがあります。

一方、定期的にデータを送受信するためネットワークへの負荷が高いといったデメリットもあります。ネットワークの帯域やデータの優先度を考慮して、RPI(通信周期)を設定してネットワークの負荷に合わせた調整を行いましょう。

主な用途

EtherNet/IPは米国でのシェアが高いプロトコルです。製造業、エネルギー、自動車、医療機器、プロセス制御など、広範囲な産業分野で使用されています。

EtherCAT

特長

EtherCATは、Ethernetを使用した産業用のオープンネットワークの1つです。
ドイツのBeckhoff Automationによって開発されたプロトコルで、ETG(EtherCAT Technology Group)が機能要件や認証手順などを規定・管理しています。通信帯域を有効活用した高効率通信を特長としています。ノード間のデータ通過時間による遅れを調整した同期制御が実現できるため、モーションコントロール用のネットワークとしても対応できます。

  1. 機器間で1μs以下の高速同期が可能
    EtherCATは、データ伝送に特化した通信方式で、データフレームに受信データを格納して直接次のノードに転送することができます。これにより、データが途中で解析されることがなく、高速でリアルタイムなデータ伝送が可能になっています。また、受信したデータをすぐに次のノードに伝送することができるため、1μs以下の高速同期が可能となっています。
  2. 二重化が可能
    EtherCATの通信回線を冗長化することで、システムの信頼性を向上させることができます。通常、EtherCATは1本のケーブルでネットワークを構成しますが、2重化では2本のケーブルを使用します。1本のケーブルで構成する場合、ケーブルの断線などの障害が発生するとネットワーク全体に影響を与えるため、信頼性に課題が生じます。そこで、2本のケーブルを使用することで、1本のケーブルに障害が発生しても別のケーブルで通信を継続できるようになります。これにより、システムの信頼性を高めることができます。ただし、2重化には2本のケーブルを用意する必要があるため、機器や配線に追加のコストがかかる場合があります。
  3. インストールが容易

通信仕様

項目EtherCAT
伝送種類100BASE-TX
伝送速度100BASE-TX
通信距離ノード間距離:100m以内
伝送ケーブルSTPケーブル カテゴリ5/5e
トポロジスター、ライン、ツリー
最大接続台数65535

アーキテクチャ

物理層(Physical layer)は、ネットワーク上でデータを物理的に伝達します。これは、ネットワークの中核となる電気、すなわち「機械的」なレベルです。

データリンク層(data link layer)は、データをパケットにエンコードする場所です。ここでのEthernetの実装は問題なく、EtherCATはそれを使用しています。しかしEthernetユーザがよく知っているネットワーク(IP)層(Network layer)やトランスポート層(TCPやUDP)(Transport layer)など他の層は、サイクルタイムのためにEtherCATでは完全にスキップされています。

通信方法

EtherCAT のマスタ/スレーブ間通信には2つの方式がある。1つは、スレーブに接続された工作機械やロボットなどを動かすために周期的に制御データを配信するPDO(Process Data Object)と主にスレーブの初期設定に使用する不定期にデータを送受信するSDO(Service Data Object)です。

PDO(Process Data Object)

工作機械やロボットのサーボモータの位置制御などは、一定の制御サイクルで入出力データを更新する必要がある。このような周期性のあるデータ通信にPDO通信を使用する。しかも更新サイクルはかなり早く、250マイクロ秒から4ミリ秒当たりが一般的です 。RS485のポーリングサイクルや100Mbpsの標準イーサネットでは、実現は困難です。

PDOの動作イメージは、マスタと各スレーブのメモリ空間に工作機械やロボットを制御するコマンドやステイタス領域を定義し、マスタとスレーブは自分自身のメモリ空間に書き込む。あとは、On The Fly で動作する周期通信(PDO)がマスタとスレーブのメモリ内容の同期をとる。

SDO(Service Data Object)

SDO はスレーブの初期設定や EtherCAT 以外の様々なプロトコルやデータの転送に使用する。ここでは、スレーブの初期設定に絞り動作概要を説明する。
EtherCAT で使用するアドレスモードは、4 の様にロジカルアドレスとデバイスアドレスがある。デバイスアドレスには更に3つのアドレスモードがある。

主な用途

高速な同期制御を活かし、サーボモータやロボットなどのモーション制御をはじめ、半導体製造装置、電車、ロケット、舞台装置、農業機械といったリアルタイム性が求められる装置に幅広く採用されています。

PROFINET

特長

PROFINETは、Ethernetを使用した産業用のオープンネットワークの1つです。
ドイツのPROFIBUS & PROFINET Internationalによって開発されたプロトコルで、日本国内では日本プロフィバス協会が規格団体として技術サポートを行っています。TCP/IPに準拠した通信を行うだけでなく、EtherCATと同様にTCP/IP処理を経由しない通信で、リアルタイムな処理も実現できます。

通信仕様

項目PROFINET
伝送種類100BASE-TX(IEEE802.3u)、オプション:1000BASE-T(IEEE802.3ab)等
伝送速度100Mbits/s、オプション:1Gbits/s等(銅線の場合)
通信距離100m(銅線の場合)
伝送ケーブル銅線、光ファイバ、無線
トポロジライン、リング、スター、ツリー
最大接続台数制限なし

アーキテクチャ

PROFINETのアーキテクチャは、標準イーサネット上にPROFINETを実装したイーサネットとの共存を狙ったものと専用ハードウェアを使ってPROFINETを実装した高速性を狙ったものとの大きく2種類に分類されます。

通信方法

PROFINETは「リアルタイム性の高い周期データ通信」と「非周期データ通信=NRT(Non Real-time)」の2つの通信方式があります。
また、リアルタイム性の高い周期データ通信には、RT(Real-time)とIRT(Isochronous Real-time)があります。

NRT(Non Real-time)

TCP/IPのプロトコルを使用して、リアルタイム性を要求しない非周期データ通信を行います。NRTではパラメータの読み書き、診断結果の読み出し、機器情報(I&M : Identification and Maintenance)情報の読み出しなどを行います。

RT(Real-time)

RTは標準のEthernetハードウェア上にソフトウェアプロトコルを追加して、リアルタイム通信を実現します。具体的には、RTフレームはEthernetフレーム内のVALNタグ(IEEE803.1Q)を用いて優先度を定義し、NRTのフレームや一般のTCP/IPフレームよりも高い優先度で通信します。多くのフィールドバスと同等のパフォーマンスである10ms程度の周期のリアルタイム通信を実現します。

IRT(Isochronous Real-time)

IRTは、高精度の同期制御で重要となる等時性とジッタ(ゆらぎ)を、RTよりさらに高いレベルで保証するリアルタイム通信です。例えば、150軸の多軸同期制御において、通信周期1ms以下、ジッタ(ゆらぎ)1μs以下を実現できます。これを実現するために、ハードウェアはスイッチ機能内蔵の専用ASICを使用し、図2に示すように通信サイクルをIRTチャネルとオープンチャネルに分け、1サイクルの中でリアルタイムデータと非リアルタイムデータの時分割通信を行います。この帯域分割は、PROFINET IRT機能を搭載するASICで実行されるため、機器に依存せずにIRT通信を実現できます。IRTの最小更新時間の初期値は250μsに決められていますが、最新の技術で最小更新時間を31.25μsまで低減できるようになりました。

主な用途

PROFINETはヨーロッパでシェアの高いプロトコルです。製造業、自動車、医療機器、ロボティクス、食品・飲料産業など、広範囲な産業分野で使用されています。

各オープンネットワークの特徴

EtherNet/IPは従来型イーサネットとの互換性とそのメリットを優先し、「ハードリアルタイム性」は弱いです。
EtherCATは逆に「ハードリアルタイム性」に強く、従来型イーサネットとの互換性に制限があります。
PROFINET は全ての領域に対応しているが、用途により使い分ける必要があります。
また、各産業用オープンネットワークの特徴を以下の表にまとめています。

EtherNet/IPEtherCATPRFINET
管理団体ODVA(略称)EtherCAT
technology Group
プロフィバス協会
対応レベルコントロールコントロール
フィールド
コントロール
特長ネットワークと連携し様々な機器と接続可能複数のトポロジーに対応、CANベース、信頼性が高い30μm伝送の超高速通信高速。PROFIBUS連携可(ただし、別のプロトコル)
ケーブルEthernetベースEthernetベースEthernetベース
最大通信速度[bps]10M/100M1G10M/100M
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この記事を書いた人

ただのサラリーマン | PLC | 画像 | ロボット | 製造業のノウハウを発信しています |

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