3Dカメラ/3Dビジョンの原理と特徴を説明します。
この記事で分かること
- 3Dカメラの原理と特徴が分かる
- 各方式の具体的なアプリケーションが分かる
3Dカメラの概要
3Dカメラとは
3Dカメラとは、「距離」を計測できるカメラです。

2Dカメラと3Dカメラとの違い
2Dカメラは、画素ごとに「色」を記録しています。
一方で、3Dカメラは、画素ごとにカメラから被写体までの「距離」を計測します。

3Dカメラの種類
3Dカメラは大きく「アクティブ方式」と「パッシブ方式」の2つの方式に分けられます。
アクティブ方式は、赤外光や特殊なパターンの照明を対象物体に照射し、対象物体からカメラに到達する時間や光の状態を観察することでカメラと対象物体の距離を取得しています。光を投光し、カメラにより反射光を受光することで距離情報を得るため、外乱光に影響を受けやすい性質があります。
パッシブ方式は、赤外光や特殊な照明を照射せずに、画像の特徴を利用して距離を取得する方法です。したがって、外乱光に影響を受けにくい性質があります。
ToF(Time of Flight) | 構造化照明 | 2眼ステレオカメラ | |
---|---|---|---|
カメラ | 1眼 | 1眼 | 2眼 |
光源 | 近赤外光/LED | プロジェクター | 基本的に不要 |
方式 | アクティブ方式 | アクティブ方式 | パッシブ方式 |
原理 | 投射光が対象物体に反射して戻るまでの時間を計測することで距離を計測します。![]() | パターン光を対象物体に投影してカメラで投影状況を観察することで距離を計測します。![]() | 2つの画像の視差を測定し、三角測量の原理で距離を計測します。![]() |
ToF(Time of Flight)
ToFとはTime of Flightの略称です。ToFカメラの構造はカメラと光源が一体になっています。光源の投射光が対象物体に反射してカメラに戻るまでの時間を計算することで距離を計測します。
また、光源は近赤外光以外にレーザ光や可視光などが用いられています。

時間の計算には、光の「位相差」を使います。位相差を時間差に変換して、光の速度をかけることで、対象物体までの距離を求めることができます。
メリット
不定の光速の時間差を距離に換算するため、短距離または長距離でも検出精度は一定となります。そのため、他の方式には無い①撮影距離が広いことがメリットです。
他にも、②対象物体の反射率に影響を受けにくいことや、③高フレームレート、④暗所での撮影が可能、⑤非常に低コスト、⑥コンパクトというメリットが挙げられます。
デメリット
光源は、一般的に近赤外光を使いますが、ハロゲンランプや太陽光などの外乱光には近赤外光が含まれます。それらが距離の計算に影響を与えるため、太陽光などの外乱光に影響を受けやすいことがデメリットです。
まとめ
撮影距離が広いことや高フレームレートであることから、物流分野では産業ロボットを使用したデパレタイズ時の段ボールの大きさや形状の測定、介護・医療分野では介護者の姿勢分析による人の転倒や転落の推定や患者のモニタリングなどで活用されています。精度は10mm~100mmであるため、比較的に精度にシビアでないところで活用されます。
構造化照明
構造化照明方式は、カメラとプロジェクターが一体になっています。
プロジェクターで格子、ドット、ラインといったパターン光を対象物体に投影して、そのパターンのひずみをカメラで捉えることで距離を計測します。

メリット
他の方式に比べて①高精度に距離計測でることや、②暗所での撮影が得意であることがメリットです。
デメリット
撮影距離が狭いことや、外乱光に影響を受けやすい、またプロジェクターを必要とするためコンパクト性に欠けることがデメリットとして挙げられます。
まとめ
屋内かつ0.1mm~1mmの高精度な3次元計測を必要とするアプリケーションであれば活躍できます。
一方で、高コストであるため、投資対効果が合わないということが多いです。
鏡面体、透明体の認識が苦手という弱点があります。また、構造化照明方式は例えば対象物体に投影された照明のドット状態を観察して距離を計測するため、面サイズ(▢[mm]×▢[mm])が大きいワークや、穴・凹凸が少ないワークに限られます。
しかし、最近ではそれを補うために認識部にディープラーニングを活用することで、鏡面体や透明体、ワーク形状が複雑なものや、ワークサイズが小さいものまでも高速・高精度に計測可能な3Dカメラがあります。
2眼ステレオカメラ
一般的にはパッシブ方式による2つのステレオカメラを用いた方式です。それぞれのカメラの視差情報から距離を計測します。平たく言えば、人間の目です。

メリット
2眼ステレオカメラ方式は①安定性がメリットです。外乱光に強く、屋外でも使用できます。
精度は0.1mm~100mmと高精度なものであれば、構造化照明方式と同程度で、かつコンパクトです。
またパッシブ方式のため、他センサーとの併用が可能です。
デメリット
2つのそれぞれのカメラに対して校正を行う必要があります。また、カメラ間の距離から割り出すため、経時劣化によって基盤位置などにずれが生じた場合は校正が必要です。
2カメラの画像を取り込むため、処理の負担が大きくなってしまいます。
まとめ
高精度かつ安定性が2眼ステレオカメラの特徴です。パッシブ方式のため、透明体や金属体など様々なワークを認識することができます。
構造化照明方式と同様に、認識部にAIを活用しているものもあります。3DCADデータと2カメラの画像データを使用した3次元計測の学習をAIで行うことで、透明体や金属体はもちろんのこと、面サイズの小さいワーク(1mm×1mm)や形状の複雑なワークを高精度かつ安定して認識できる2眼ステレオカメラも登場しています。
各方式の特徴まとめ
各方式の特徴をまとめた表が以下です。
ToFカメラ | 構造化照明+カメラ | 2眼ステレオカメラ | |
---|---|---|---|
計測範囲 | ◎ | △ | ○ |
計測精度[mm] | △(10~100) | ◎(0.1~1) | ○(0.1~100) |
計測・認識時間 | ◎ | △ | ○ |
暗所での撮影 | ○ | ◎ | △ |
屋外での撮影 | △ | × | ○ |
コンパクト性 | ◎ | × | ◎ |
コスト | ◎ | △ | ◎ |
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